根管治療
根管治療について
根管治療が必要な症状とは
①不可逆性歯髄炎
う蝕を放置すると、原因細菌の作る毒素や、細菌自体が歯の内部にある神経(歯髄)まで到達し、歯髄炎を引き起こします。
可逆性歯髄炎が治らないと、不可逆性歯髄炎に移行します。痛みがはっきりと現れて、何もしていなくても痛みを感じます。歯髄を取り除かないと治らない状態です。
歯髄炎を放置すると、歯髄が死んで(失活して)「歯髄壊死」の状態になります。知覚を司る神経が死んでしまうことで全ての痛みが鎮まり、一見治ったかのように感じる状態です。
一度活性が失われた歯髄は、回復や再生することはないので、痛みなどの症状はありません。
しかし、感染した細菌はそのまま歯髄や歯の内部に停滞し、病状はさらに進行します。
歯髄壊死の後は、歯髄が腐敗する「歯髄壊疽(えそ)」の状態になります。
う蝕による歯の欠損が大きい場合には、強い腐敗臭や口臭として現れます。また、歯の色が白色から黄色や灰色に変化します。その後、根尖性歯周炎に移行していきます。
②根尖性歯周炎
神経が壊死し、一度抵抗力を失った歯髄腔内部では、細菌が増殖していきます。やがて歯根の尖端から、歯根の周囲の組織(根尖歯周組織)に細菌の感染が広がり、病巣が拡大し炎症が起こります。
これが根尖性歯周炎と呼ばれ、歯根から広がった炎症によって歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶けて破壊されるため、激しい痛みが生じて歯肉や顎が腫れることもあります。
さらに進行すると、歯根の先端にたまった膿が歯肉にできた穴から口の中に出てきたり、皮膚に穴ができて膿が外へ出てくることがあります。
③象牙質知覚過敏症
歯肉が下がってしまったり、歯茎の境目の歯質が磨耗により削れたり、噛みしめや歯軋りにより歯茎との境目が欠けたり(チッピング)すると、歯が染みやすくなることがあります。
また、むし歯治療の後に一時的に知覚過敏になることがあります。歯磨き指導や薬剤塗布で治る場合から、神経を取り除いたりしなければならない場合があります。
④歯の破折
歯をぶつけたり(外傷)、硬いものを噛んだりすると歯冠部が破折してくることがあります。歯の神経が露出していない、または僅かな露出に対しては部分的な修復処置のみで対応できる場合もありますが、大きく神経が露出してしまった場合は、抜髄処置が必要となります。破折の方向や深さ、位置によっては抜歯が必要となるケースもあります。
⑤歯性上顎洞炎
根尖性歯周炎や歯周病が原因で、上顎洞炎を引き起こすことがあります。
根尖性歯周炎が原因であれば、根管治療で治ることがあります。難治性の場合、上顎洞内を直接掻爬するなどの処置が必要になることがあります。
この場合は、口腔外科と連携した治療が必要な場合となります。
根管治療の治療法
『根尖性歯周炎の予防と治療』が、根管治療の目的です。
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基本的には痛みが出ないよう浸潤麻酔下で、内部の歯の神経(歯髄)を取り除く歯内療法「抜髄」を行います。
根管内を薬液で殺菌、消毒、洗浄をしながら神経や血管組織の除去を行ったら、内部の空洞(根管内)には、再び細菌などが侵入しないように、根管を隙間なく緊密にふさぐために根管充填を行います。
このような治療によって、抜髄した歯は根尖歯周組織の健康が保たれます。 -
基本的な術式は抜髄処置と同様です。原因となっている歯の内部で感染した歯髄や腐敗物、細菌を取り除くことで、根尖病巣の治癒を図ります。
しかし、根管の形態や感染の広がり方によっては治療が非常に困難な場合もあり、全体の成功率は60~80%程度と言われています。
歯髄炎の治療法
根尖性歯周炎の治療法
根管に上からアプローチする通常の根管治療のみで症状や病状が改善しない場合、歯肉を切開し、根尖部やその周囲の病相を直接外科的に処置する「外科的歯内療法」もあります。根管治療は数回の治療を要しますが、治療と治療の間隔が開き過ぎてしまうと、状態が一気に悪化し抜歯に至ることもあります。
予約状況によりますが、根管治療が続く場合は、通常1~2週間、最長でも一ヶ月以内にご来院ください。
抜髄や感染根管治療を行なった歯は、歯質の再生や強化といった作用が失われ、歯質の切削により適度な弾性と安定した強度が保たれなくなり、歯や歯の根が割れる(破折)こともあります。
人体の組織全てに言えることですが、何よりもご自身の本来の体そのものを使っていただくことが一番です。
削る、詰めるなどの治療を極力行わないために、メンテナンスを定期的に行い、予防と早期発見早期治療を行うことが肝要です。
抜歯をしなければならないケース
- 歯が縦や歯肉の中で割れている場合
- 歯根が溶けて吸収されている場合
- 重度歯周病で歯を支える骨がない場合
- 感染根管治療や歯根端切除術を行っても根尖性歯周炎が治らない、いわゆる難治性の場合で、特に痛みや排膿が改善しないケース
これらの場合、歯を残すことで逆に感染が広がり、口腔内や全身に悪影響を及ぼしてしまうため、抜歯を行う必要があります。
痛みに配慮した治療
処置の際疼痛を伴うことが予想される場合、原則浸潤麻酔を行い、痛みの発生を抑えた上で治療を開始します。
治療後もしばらく痛みが続いたり、感染などが原因で腫れが起こることもありますので、必要に応じて鎮痛剤や抗菌薬を処方します。
よくある質問
使用している機器はなんですか
根管長測定器
根管治療の際、口腔粘膜と根管内に挿入した測定電極の先端との間のインピーダンス値を測ることにより、根の長さを測定する装置です。
ステンレススチールファイル
従来から用いられている、手用で根管内を清掃を行うための細い器具です。細くなってしまった根管を探ったり、根管内や壁に残った汚染物質やガッタパーチャの除去に適しています。
ニッケルチタンファイル
ニッケルチタン合金は、その特性から、近年根管治療において非常に有用な器具として使用されています。超弾性、形状記憶という二つの大きな特徴を持ち、本来の根管の形態を逸脱することなく治療を行えるため生体に優しく、切削効率も良いため、短時間、短期間で治療を終えることができます。
エンドモーター
ニッケルチタンファイル用の自動回転切削器具です。手用では困難な回転速度やトルクを制御できるため、治療中の根管内でのファイルの破折を防止するほか、過剰な負荷を回避できるので、歯牙への負担を軽減します。
マイクロスコープの必要性
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肉眼では見えないものを4倍から20倍までに拡大し、観察できます。倍率が2倍になると縦と横がそれぞれ2倍になるので実際は4倍の情報量になります。
倍率を8倍にすると64倍の情報量が得られるのです。拡大すればするほど、詳細部位を正確に精密に把握できます。
明るい視野と強拡大下で直接う蝕の取り残しや汚染物質を確認できるため、精密な診断と治療が可能になり、最小限の侵襲で治療できます。
また、感染の取り残しを極限まで少なくすることができるので、再治療のリスクは減少し、歯の寿命を伸ばすことにつながります。
ラバーダムとはなんですか?
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大人の口の中には、300~700種類の細菌が生息しているといわれます。
歯をよく磨く人で1000~2000億個、あまり歯を磨かない人では4000~6000億個、さらにほとんど磨かない人では1兆個もの細菌がすみ着いています。
これらの細菌が治療中の歯に入り込むと、術中に感染を起こし、予後が悪くなる場合があります。
ラバーダム防湿法とは、根管治療やう蝕処置など、治療の対象となる歯に細菌や唾液が入り込んだり、使用する器具や薬剤が直接お口の中に落下したり流れ込んだりしないように、ラテックス製またはSEBSなど、弾性のあるシートで境界をつくる方法です。
感染症の予防など、衛生面について
使用する器具は全て消毒、滅菌を行っております。ディスポーザブル(使い捨て)の器具を積極的に使用しています。
他院で治療途中でも
相談・治療は可能ですか
もちろん可能です。保険診療において、複数の医院に継続して同時にかかることはできませんので、他院にて治療中の場合はその旨を当院のスタッフにお伝えください、