虫歯治療
虫歯とは
う蝕は、歯面に付着したデンタルプラーク中の細菌(ミュータンス菌、ラクトバチラス菌など)の感染によって起こります。これらの細菌は、飲食した食べ物から栄養を取り、酸を作ります。
この酸によって歯が溶かされてしまった状態がう蝕です。
人間のからだには、この酸から身を守るための抵抗力が備わっています。
虫歯と唾液の関係
その大きな役割を担うのが唾液です。
唾液は、物を食べるときに咀嚼した食べ物を塊としてまとめる役割(食塊形成)や、嚥下をスムーズにしたり、免疫抗体によりウイルスなどの外敵から身を守る働きがあるほか、細菌により酸性に傾いたお口の中を中和したり(緩衝作用・中和作用)、一度溶かされかけた歯の表面を元に戻そうとする働きが備わっています(再石灰化)。
しかし、酸にさらされる回数が多かったり、時間が長かったりすれば、酸が歯を溶かす力が勝り、う蝕になってしまいます。
つまり、う蝕になるかならないかは、細菌と体の抵抗力の闘いともいえるのです。
虫歯を引き起こす細菌とは
う蝕を引き起こす病原性がもっとも強いと言われている細菌は、歯肉より上のプラーク中に多く存在するミュータンス菌です。
この菌は、歯面に対して強い付着能を持っており、彼らが集団化することにより低いpH環境の中でも生存し続けて酸を産生します。
ミュータンス菌は脱灰の初期に重要な役割をはたすと考えられています。
強い病原性をもつ細菌はもう一つあり、それがラクトバチラスです。ラクトバチラス菌は付着能こそもっていませんが、定着しやすく住みやすい環境があると増殖を起こします。
特にう蝕の深部に多く確認できることから、脱灰の後期に重要な役割をはたすと考えられています。
口腔環境が不良であればあるほど増殖するので、ラクトバチラス菌の数で、口腔環境や食習慣を客観的に評価できます。
人それぞれもつ歯の質によってもう蝕に対する抵抗力は異なります。
最も表層に存在するエナメル質の臨界pH(歯が溶け始める酸性度)は、5.5~5.7と言われていますが、若い永久歯、第二層の象牙質や歯根表面に存在するセメント質、また乳歯の臨界pHは5.7~6.2程度とされています。
食事をする際の注意事項
食事をとるたびに、口腔内は数分で酸性になり、歯の表面の成分が溶かされはじめます。
これを脱灰と呼びますが、およそ30分以上時間が経過すると、唾液の力でpHは上昇し、再びミネラルが歯に取り込まれることで、歯の成分はもとにもどされます(再石灰化)。
間食を多く取ったり、糖分の多いアメやジュースを頻繁に摂取する方は特に注意が必要です。
常に口腔内が酸に晒され続けることになり、中性に戻る時間が極端に少なくなってしまい、う蝕発生リスクは激増してしまいます。間食や甘い飲み物は時間を決めて摂るようにし、食べたら必ず歯磨きを行うようにしましょう。
C1~C4の解説とそれぞれの
簡単な治療の流れ
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特徴
歯の最外層であるエナメル質に限局した実質欠損を伴うう蝕を示します。
治療内容
歯科用のプラスチック(合成樹脂)であるコンポジットレジン、またはグラスアイオノマーセメントによる充填処置を行います。
周囲は脱灰していることが多いため、フッ化物入りの歯磨剤の使用と、定期的な高濃度フッ化物の塗布が推奨されます。
C1
治療期間
初期のう蝕は、介入(削る、詰めるなどの積極的な処置)を行わず、フッ化物塗布や日々のセルフケアを行い経過観察を行います。
深い裂孔を有する咬合面に対しては、う蝕発生リスクを軽減するため、シーラントと呼ばれる予防填塞処置を推奨しています。
治療の流れ
個々の感覚によるが、浅いう蝕であるため、治療の際は痛みを感じづらいので、多くの場合麻酔は不要となります。
C2
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特徴
歯の第二層である象牙質まで進行したう蝕。
多くの場合はエナメル象牙境に沿って内部に向かって大きく広がっているため、実際のう蝕部分は、表面から確認できる実質欠損よりも大きいのが特徴。表層下脱灰と呼ばれます。
治療内容
隣接面を含まない場合は、コンポジットレジンまたはグラスアイオノマーセメント充填で対応できるケースが多いです。
隣接面を含む場合、もしくは切削により失われる歯質が大きい場合は、インレーまたはクラウンによる間接修復を必要とします。
治療期間
コンポジットレジンによる修復処置の場合、う蝕除去を行った当日にその場で充填(詰める)処置を行います。
このため、1日で終了となります。インレー、クラウンなど、型取りを行う必要のある処置については、原則1回目に型取り、2回目に修復物・補綴物の装着となります。
仮歯作成の必要時や、痛みの経過を観察する場合は、回数が追加となることがあります。
治療の流れ
1.コンポジットレジン又はグラスアイオノマーセメントによる直接修復法
う蝕が小範囲の場合、合成樹脂やセメントを直接詰める方法が適用できます。
この治療の場合、一回で治療が完了できます。
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表面麻酔
う蝕の深さにもよりますが、原則麻酔を行った上で治療を開始します。
表面麻酔を行うことで、浸潤麻酔針の刺入による痛みを和らげます。 -
浸潤麻酔
象牙質切削時に痛みを感じないよう、注射による麻酔を行います。
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う蝕の除去
歯科用のモーターで又は手用のインスツルメントでう蝕の除去を行います。拡大視野で行い、侵襲を最小限にとどめます。
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充填
合成樹脂、又は歯科用セメントにて充填を行います。噛み合わせを確認し、最終研磨まで行ったら治療は完了です。
2.インレー又はクラウンによる間接修復法
う蝕が広範囲に及び、直接修復法での強度が期待できない場合、当日は型取りまで行い、
後日修復物又は補綴物を装着する間接修復法を行います。
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表面麻酔
う蝕の深さにもよりますが、原則麻酔を行った上で治療を開始します。
表面麻酔を行うことで、浸潤麻酔針の刺入による痛みを和らげます。 -
浸潤麻酔
象牙質切削時に痛みを感じないよう、注射による麻酔を行います。
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う蝕の除去
歯科用のモーターで又は手用のインスツルメントでう蝕の除去を行います。拡大視野で行い、侵襲を最小限にとどめます。
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必要に応じて裏装
う蝕が深い場合、必要に応じて、神経に近い部分を保護し、刺激を遮断するためにコンポジットレジンなどで裏装と呼ばれる処置を行います。
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印象、咬合採得、シェードの確認
(白い詰め物、被せ物の場合)う蝕除去、裏装が終わったら型取り、噛み合わせの確認を行います。
白い詰め物や被せ物の場合は、口腔内カメラで色合わせのための写真を撮影します。 -
仮封又は仮歯の作成
型取りを行ってから詰め物・被せ物が入るまで1~2週間ほど時間をいただきます。その間、しみたりものが詰まったりしないよう仮の材料で蓋をします。
被せ物の場合、仮歯を作製します。 -
修復物または補綴物の装着
詰め物・被せ物が出来上がったら、再度ご来院いただき、調整を行いながら装着を行います。
C3
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特徴
う蝕が象牙質を超えさらに深部に進行し、歯髄腔(歯の中心部分にある、神経や血管が通っている空間)にまで達し、歯髄が感染を起こしている状態です。
歯髄に炎症が出ている場合は、冷たいもの、温かいものでしみるような痛みが出たり、何もしていない時でもズキズキ痛む場合があります。
痛みを伴わないこともありますが、う蝕を除去している段階で神経にまで達してしまう事もあり、この場合も歯髄が感染していることになります。
治療内容
基本的には痛みが出ないよう浸潤麻酔下で、内部の歯の神経(歯髄)を取り除く歯内療法「抜髄」を行います。
根管内を薬液で殺菌、消毒、洗浄をしながら神経や血管組織の除去を行ったら、内部の空洞(根管内)には、再び細菌などが侵入しないように、根管を隙間なく緊密にふさぐために根管充填を行います。
このような治療によって、抜髄した歯は根尖歯周組織の健康が保たれます。
治療期間
根管治療に数回の治療を要します。通常2~3回で終了しますが、根の細さや炎症の程度により治療期間が延長することがあります。
痛みがないこと、膿や出血がないことを確認したら、根管内を緊密に封鎖し、支台築造(歯を補強するための土台を立てる処置)を行います。支台築造が終わったら、型取りののち、被せ物の装着となります。
治療開始から被せ物装着まで、目安計6~7回ほどとなります。
治療の流れ
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麻酔
処置の際痛みが出ないようにしっかりと麻酔を行います。
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う蝕の除去
う窩には細菌が大量に住み着いているため、歯髄腔への感染を極力避けるため、まずう蝕部分を除去します。
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歯髄の除去と根管拡大、根管内の消毒
感染してしまった歯髄を取り除き、消毒液を併用しながらファイルで根管内の清掃を行います。
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根管充填
根管内の消毒・清掃が完了したら、最終的なお薬を根管内に充填し、空隙を埋めていきます。
空間があるとわずかなタンパク質を栄養にして細菌が増殖してしまうからです。 -
土台(コア・支台築造)
根管治療を行なった歯は、大きく削っているため強度が落ちてしまいます。
一本一本の歯には、30~60kgの負荷がかかるため、しっかりと支柱を立てて破折を防止します。 -
補綴
築造が終わったら、冠(被せ物)による補綴処置を行います。部分的な詰め物よりも、被せ物を装着することで、より機能的になり、さらに強度を上げることができます。
C4
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特徴
う蝕がさらに進行し、歯冠部(歯のあたまの部分)がほとんど残っていない状態です。
根だけが残っている状態を指すため、残根状態とも呼びます。
見た目で歯冠が残っていても、う蝕を除去した後にC4の状態になる事もあります。
治療内容
歯根の状態によるが、歯の根が支えとして使える場合は、土台を立てて被せ物を作ることが可能となる場合もあります。
状態が悪い場合、残すことによりかえって感染や炎症を引き起こしたり、広げる可能性があるため、抜歯を必要とします。
治療期間
歯冠部分がなくなり、歯根のみが残存した状態です。残根部分が土台として使える場合は、C3の処置内容及び回数に準じます。
残っている根の部分の状態が悪い場合、抜歯が必要となります。
抜歯後、歯肉や骨の治癒を待ち、歯がなくなってしまった部分を補う処置を行います。
治療の方法は大きく分けて3つの選択肢があります。
欠損箇所や全身疾患の有無、周囲組織の状態、噛み合わせの状態などによって方法や期間が異なりますので、お口の中の状態とお選びいただける治療法をお伝えした上でご相談させていただく形となります。
治療の流れ
歯が保存できる場合は、C3の治療に準じて補綴処置まで行います。
困難な場合は、浸潤麻酔下での抜歯が必要になります。